さて、最近ヨーロッパではユーロ崩壊なんていわれてなんだか騒々しいですが、同時に特許においてもなかなか興味深い動きがあるのでご紹介します。
かなり付け焼刃的に勉強したので、間違っているところがあるかもしれませんが、コメント欄でご指摘いただけるとうれしいです。
今ヨーロッパでは、統一された特許制度を作り、同時に欧州全域の特許に関係する訴訟を取り扱う統一特許裁判所の創設に向けて動いています。
実は、つーか、もう、欧州全体で統一された特許制度を作ろうぜ!っていう動き自体はずーっと長いことあったらしく、1960年代からそういう議論がなされていたようです。そんな感じで1975年には
共同体特許条約(ルクセンブルク条約)が調印されました。しかし、この条約では、
出願人がクレームと特許明細書全文をすべての公用語に翻訳しなくちゃいけないっていうすさまじくだる~い義務が課されていましたので、実際には発効しませんでした。
でもまぁやっぱ必要っすよね。ということで、1997年に欧州委員会は
「共同体特許及び欧州の特許制度に関するグリーンペーパー」を公表し、これに基づいて、
「共同体特許に関する理事会規則案」を出しました。規則案の採択にはだいぶ苦労したようですが、欧州閣僚理事会は、2003年3月3日、どうにかこうにか
「共同体特許に関する共通政治アプローチ」に合意。
「よーしパパ、欧州全域で単一の効力を持つ特許つくっちゃうぞー」、と勢いづいたのですが、翻訳言語どうすんのよ、みたいな議論があって、翌2004年結局、Competitiveness Council(競争力評議会)は規則について合意できずに終わります。
ここでひとまず現行の欧州の特許制度がどうなっているかっていうと、今は、
欧州特許条約(European Patent Convention=EPC)に基づく欧州特許っていうものがあります。ただし、これはあくまでEPCに加盟している各国における特許権の束でして、欧州全体で統一された特許というわけではないです。
「つまり。。。どういうことだってばよ?」って人のために説明します。
たとえば、日本企業が、
「よーしパパ、ヨーロッパでも特許とっちゃうぞー」、といっても、欧州特許庁に出願する際には、どこで保護を受けるかという選択をするわけです。
「んじゃとりあえず、イギリスとドイツとデンマークで取っとくか」ということになれば、得られる特許権はその3カ国における特許権ということになります。あくまで特許申請手続を欧州特許庁(EPO)で一まとめにできますよっていうだけで、欧州全域に効力を持つような一つの特許権ではないわけです。
つまり、「電車のチケットもバスのチケットもこの窓口で買えますよ」っていうだけで、あくまでもらえるチケットはバラバラです。電車もバスも自由に乗れるパスモとかオイスター(ロンドンのカード)ではないわけです。

そして、この欧州特許は長いこと、「てか使いずれーよ」、と批判に晒されてきました。
よく指摘される問題点は以下の3つ。
一つ目は、これだけヒト、モノ、サービス、カネを自由に移動できる単一市場とか言っておきながら、特許が結局属地的だと、モノ・サービスの移動が制限されちゃうよっていう根本的な点。確かに、イギリスにおける特許でビジネスしてるときに、じゃフランスでもやろうよってなったら、いちいちまた申請しなくちゃいけないわけです。まぁ別々にチケットくれるよりも、パスモとかオイスターくれよ、というわけです。そらそうだよね。
二つ目は、特許取得コストの高さ。EPCの65条は、特許のクレームと明細書について、保護を受ける国全部の公用語の翻訳をつけることを条件としています。これがバカにコストを必要とし、日本やアメリカでとるよりも欧州特許は取得コストが平均して10倍かかるといわれています。たとえば13カ国で特許保護を受けようとしたら、18000ユーロ必要だそうで、そのうち10000ユーロは翻訳費用だそうです。なめてます。
三つ目は、欧州特許はしょせん各加盟国の特許権の束なので、特許侵害訴訟とかは各国の裁判所で行います。当然判事もいろいろいますし、ドイツみたいにしょっちゅう特許訴訟やってる国もあれば、そうじゃない国もあるわけで、同じ条文の解釈とかでもけっこうばらつきがあるんですね。そんなん予測困難で困るじゃんということです。当たり前っす。
三つ目のポイントについては、欧州の特許訴訟をひとまとめに扱ってくれる特許裁判所を作ろうぜ!っていう動きがあり、これは1999年から統一欧州特許裁判所に関する提案を欧州特許庁(EPO)が作成してきました。これは
European Patent Litigation Agreement (EPLA=統一特許訴訟制度)、と呼ばれています。
とりあえず続きます。