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  • 欧州単一特許 訂正です。
    [ 2011-12-15 09:58 ]
  • 統一特許訴訟制度と荒ぶるCJEU
    [ 2011-12-13 11:26 ]
  • 欧州単一特許とカール五世
    [ 2011-12-13 10:38 ]
  • 欧州単一特許について イントロ
    [ 2011-12-13 10:03 ]

 

欧州単一特許 訂正です。

偉そうに欧州単一特許について書いていましたが、やはり間違えていました。

ちなみに、この欧州単一特許については、あくまでEU法の枠組みではなく、条約でやりますので、EU加盟国以外でも仲間に入れてもらえるということになっています。
たとえばトルコとかスイスとかですね。


と書いていましたが、若干混乱していました。
UPLSと間違えたのかな。。。

統一特許訴訟制度のほうは確かに条約なので、EU法とは関係ないのですが、単一特許の方はあくまでEU法の枠組みだということです。
EUの機能に関する条約(旧EC条約です)に基づいて発せられるRegulationによってEU統一特許というものが設立されるという方向です。

ちなみにRegulationというのはEU法の一つの種類であって、Directiveと違って成立と同時に国内法において効力が発生します。Directiveは一定期間内にその趣旨を反映した法律を各加盟国の議会が成立させなければなりません。

現在出ているRegulation案は2つです。

REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL implementing enhanced cooperation in the area of the creation of unitary patent protection

REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL implementing enhanced cooperation in the area of the creation of unitary patent protection

「この2つのRegulation案を、強化された協力の枠組みの下で進めるよー」っつーことで、3月10日、EU閣僚理事会が決定したわけです。

このRegulationに基づく単一特許ができると、現行存在する、
・国内特許(各加盟国の国内だけで効力を持つ特許)、と
・欧州特許(EPCに基づく指定した保護指定国で効力を有する国内特許の束)
という2つの階層に加えて、3つめの特許の種類(単一特許)ができるわけです。

そんで、こないだ書いたことはまるで嘘で、これはあくまでEUのRegulationが根拠法なので、EU加盟国ではない国、たとえばスイス、アルバニア、トルコなんかにおいては、欧州単一特許は保護されないということになります。真逆の事いってましたね。めんごめんご。

今後は欧州議会で議論がなされるようです。いつごろ成立するのかは俺はわかってないです。

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by Gotama7 | 2011-12-15 09:58 | 特許 

統一特許訴訟制度と荒ぶるCJEU

さて一方で統一特許裁判所のほうですが、こちらも若干、つか大分?問題が生じています。

2009年12月4日にEUのCompetitive Council(競争力評議会)でUnified Patent Litigation System(UPLS=統一特許訴訟制度)が提案され、このULPSという枠組みの下で、European and the EU Patent Court(EEUPC=欧州EU特許裁判所)を設立し、このEEUPCが欧州における特許訴訟をまとめて取り扱うようにしようぜい!という案です。

ある意味、前述のEPLAからだいぶ前進したのですが、EU議長国は、「このUPLSとかEEUPCっていうもんが、EU法にあってんだべか、いっちょ裁判所様に聞いてみんべ」ということで、欧州司法裁判所(CJEU)に付託したのです。

あろうことか、というかなんというか、2011年3月8日のCJEUの判断は、
「こんなんダメ。いわせんな恥ずかしい」
ということでした。

これがCJEUの判断です。

簡単に言うと、
「おめぇさー、だいたいさーこんなんさー、EU法に整合してねーじゃん。たとえばよ、このEEUPCとかってのEUの機能に関する条約19条に定める司法機関になるの?違うでしょ?どうなん? あとさー、こんなん作ったら、各国の裁判所の司法権を奪うんじゃね?いいの?そんなことして。違う?俺のいってることどっか違う?あとさー、EU法の解釈についてEEUPSが間違えたらどーすんのww 誰が直すの。誰が責任取れるの?マジウケるんですけどwww だいたいEU法の解釈って誰がやんのよー、えー?いってみー?俺の目ぇみて、でっけぇ声でぇー言ってもらえますかぁー!?」

というわけです。怖いですね。

つまり、EU法の番人は俺たちなんであって、そんなわけのわからないものを作って勝手な判断してもらっちゃ困ります、ということです。

一方で、欧州産業界は、「てかあれだよね、CJEUってときどき意味不明な判断するし、てか正直、特許訴訟にからんで欲しくないんだよね、てかやっぱ、うんやっぱ」というのが本音のようです。

つーわけで、今はこのCJEU様のご機嫌もとりつつ、どうしたら納得してもらえるのか。。。

「鎮まれー!鎮まりたまえー!さぞかし名のあるCJEUともあろう御方が、なぜこのように荒ぶるのかー!!」

とまぁ、いってみれば、乙事主をなだめようとするアシタカのような状況ってわけです。わかりやすくいうと。



ちなみに、このUPLS(統一特許訴訟制度)についても、EU法の枠組みではなく条約でやる予定だったので、EU加盟国以外でも仲間にいれてもらえるということになっていたんですが、上記のとおりCJEU様が祟り神のように荒ぶっているご様子なので、参加できるのはEU加盟国に限るということになりそうです。
さらに、EU法の枠組みを維持するため、EU法の優位性とCJEUへの従属(忠誠)に関する新条項が盛り込まれる予定だそうです。おとなしくするほかなさそうです。


まぁそんなこんなで大雑把にまとめると、欧州統一特許のほうはスペイン・イタリア、統一欧州特許裁判所のほうはCJEU、がネックとなって、それぞれ調整中といった状況です。

とはいっても近い将来、統一された特許制度と特許訴訟制度ができるのは間違いなさそうですけど。

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by Gotama7 | 2011-12-13 11:26 | 特許 

欧州単一特許とカール五世

さて2004年に頓挫した欧州単一特許ですが、その後紆余曲折を経て2009年に再び議論が盛り上がってきます。

ただ、ここでの大問題は翻訳言語でした。現行案は、欧州単一特許を出願する際には、英語、フランス語、ドイツ語というEPOの公式言語のどれかを使って出願すれば、他の国の翻訳はいらないとするものなのでした。これによってたとえば英語で出願しても欧州全域で保護される特許を取得することができるので、特許取得コストを大幅に削減できます。もちろん侵害訴訟が起きた場合には、訴訟が提起された国の公用語への翻訳が生じますが(つまりポルトガルで訴えられたらポルトガル語に翻訳しなければならない)、そうでなければ翻訳を用意する必要がありません。

これにスペインとイタリアが噛み付いたのです。
「誇り高きスペイン語とイタリア語を認めないなんて横暴だ!」
というわけです。まぁ気持ちはわかります。



かつてオーストリアとスペインにまたがって太陽の沈まない帝国といわれるハプスブルグ帝国を築き上げた神聖ローマ皇帝カール五世は、神と話すときにはスペイン語を、外交使節と話すときはイタリア語を、貴婦人と話すときはフランス語を、軍人たちと話すときはドイツ語を、馬に話すときには英語を、使ったそうですが、
「貴婦人はともかく、なんで軍人用と馬用の言葉に、神様用と外交使節用が譲ってあげなあかんねん」
ということでしょうか。



関連記事
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こうして2010年の冬の間に、様々な妥協案が出されては議論がもめ、結局解決はできませんでした。言語っていうナショナリズムの根幹とも言える部分がからんだ問題なので、そう簡単に結論が出るわけはないのですが。

しかしまだ打つ手は残っていました。欧州憲法とも言われる、EU条約20条、EUの機能に関する条約326条及び329条によって、合理的な機関内にEU全体の合意が得られない場合に最終手段として9カ国以上の加盟国を集めれば、特定の分野について強引に手続きを進めることができます。
これを「強化された協力」(Enhanced Cooperation)といいます。

「強化された協力」手続はEU法にのっとり、2月に欧州議会の同意を得て、3月10日に閣僚理事会に承認されました。

そして結局イタリアとスペインを除く25カ国の間で、2011年6月7日、「単一特許保護の創設の領域における強化された協力を実施する欧州議会及び理事会規則」と、「単一特許保護の創設の領域における強化された協力を実施する適用翻訳言語の取決めに関する理事会規則」が採択されました。

これである意味スペインとイタリアを置いてけぼりにして前進する方向になりました。このまま特許制度が創出されると、それはスペインとイタリアを外した枠組みになります。

イタリアとスペインはそれぞれ、「この手続きがEU法違反だ!」といって欧州司法裁判所(CJEU)に訴えています。

関連記事
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A unitary European patent and a unified European patent litigation system – political agreement by the end of 2011?

このまま行くのか、それとも両国が「わがままいってめんごめんご☆ やっぱ俺たちも仲間に入れてよん」っていってくるのか、それはまだわからないです。

ちなみに、この欧州単一特許については、あくまでEU法の枠組みではなく、条約でやりますので、EU加盟国以外でも仲間に入れてもらえるということになっています。
たとえばトルコとかスイスとかですね。


さて、次回は欧州統一訴訟制度の方について書きますよー。

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by Gotama7 | 2011-12-13 10:38 | 特許 

欧州単一特許について イントロ

さて、最近ヨーロッパではユーロ崩壊なんていわれてなんだか騒々しいですが、同時に特許においてもなかなか興味深い動きがあるのでご紹介します。

かなり付け焼刃的に勉強したので、間違っているところがあるかもしれませんが、コメント欄でご指摘いただけるとうれしいです。

今ヨーロッパでは、統一された特許制度を作り、同時に欧州全域の特許に関係する訴訟を取り扱う統一特許裁判所の創設に向けて動いています。

実は、つーか、もう、欧州全体で統一された特許制度を作ろうぜ!っていう動き自体はずーっと長いことあったらしく、1960年代からそういう議論がなされていたようです。そんな感じで1975年には共同体特許条約(ルクセンブルク条約)が調印されました。しかし、この条約では、出願人がクレームと特許明細書全文をすべての公用語に翻訳しなくちゃいけないっていうすさまじくだる~い義務が課されていましたので、実際には発効しませんでした。

でもまぁやっぱ必要っすよね。ということで、1997年に欧州委員会は「共同体特許及び欧州の特許制度に関するグリーンペーパー」を公表し、これに基づいて、「共同体特許に関する理事会規則案」を出しました。規則案の採択にはだいぶ苦労したようですが、欧州閣僚理事会は、2003年3月3日、どうにかこうにか「共同体特許に関する共通政治アプローチ」に合意。
「よーしパパ、欧州全域で単一の効力を持つ特許つくっちゃうぞー」、と勢いづいたのですが、翻訳言語どうすんのよ、みたいな議論があって、翌2004年結局、Competitiveness Council(競争力評議会)は規則について合意できずに終わります。

ここでひとまず現行の欧州の特許制度がどうなっているかっていうと、今は、欧州特許条約(European Patent Convention=EPC)に基づく欧州特許っていうものがあります。ただし、これはあくまでEPCに加盟している各国における特許権の束でして、欧州全体で統一された特許というわけではないです。

「つまり。。。どういうことだってばよ?」って人のために説明します。
たとえば、日本企業が、「よーしパパ、ヨーロッパでも特許とっちゃうぞー」、といっても、欧州特許庁に出願する際には、どこで保護を受けるかという選択をするわけです。
「んじゃとりあえず、イギリスとドイツとデンマークで取っとくか」ということになれば、得られる特許権はその3カ国における特許権ということになります。あくまで特許申請手続を欧州特許庁(EPO)で一まとめにできますよっていうだけで、欧州全域に効力を持つような一つの特許権ではないわけです。
つまり、「電車のチケットもバスのチケットもこの窓口で買えますよ」っていうだけで、あくまでもらえるチケットはバラバラです。電車もバスも自由に乗れるパスモとかオイスター(ロンドンのカード)ではないわけです。



そして、この欧州特許は長いこと、「てか使いずれーよ」、と批判に晒されてきました。
よく指摘される問題点は以下の3つ。

一つ目は、これだけヒト、モノ、サービス、カネを自由に移動できる単一市場とか言っておきながら、特許が結局属地的だと、モノ・サービスの移動が制限されちゃうよっていう根本的な点。確かに、イギリスにおける特許でビジネスしてるときに、じゃフランスでもやろうよってなったら、いちいちまた申請しなくちゃいけないわけです。まぁ別々にチケットくれるよりも、パスモとかオイスターくれよ、というわけです。そらそうだよね。

二つ目は、特許取得コストの高さ。EPCの65条は、特許のクレームと明細書について、保護を受ける国全部の公用語の翻訳をつけることを条件としています。これがバカにコストを必要とし、日本やアメリカでとるよりも欧州特許は取得コストが平均して10倍かかるといわれています。たとえば13カ国で特許保護を受けようとしたら、18000ユーロ必要だそうで、そのうち10000ユーロは翻訳費用だそうです。なめてます。

三つ目は、欧州特許はしょせん各加盟国の特許権の束なので、特許侵害訴訟とかは各国の裁判所で行います。当然判事もいろいろいますし、ドイツみたいにしょっちゅう特許訴訟やってる国もあれば、そうじゃない国もあるわけで、同じ条文の解釈とかでもけっこうばらつきがあるんですね。そんなん予測困難で困るじゃんということです。当たり前っす。

三つ目のポイントについては、欧州の特許訴訟をひとまとめに扱ってくれる特許裁判所を作ろうぜ!っていう動きがあり、これは1999年から統一欧州特許裁判所に関する提案を欧州特許庁(EPO)が作成してきました。これはEuropean Patent Litigation Agreement (EPLA=統一特許訴訟制度)、と呼ばれています。


とりあえず続きます。

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by Gotama7 | 2011-12-13 10:03 | 特許